タイトル も 作者 も分からない!? シークレット ブック が生む 新体験

事例

こんばんは、ストーリープロモーション研究所の松葉です。

突然ですが、こんな本棚を見たことはありませんか?

こちらは池袋にある「梟書茶房」。

そこで見つけた本は、パッと見、タイトルも作者も分かりません。パッと見どころか、じっくり見ても分かりません。

なんだよそんなの買えるかよ!

買ってしまいました。

摩訶不思議です。
なぜこんな行動が生まれたのか!?

そこには新しいサービスを浸透させるためのコツが隠れていました!

いつもと違う出逢い方・買い方

「シークレットブック」。

通常、「本を買おう!」と決断する時、表紙や作者、あらすじを参考にします。
しかし、シークレットブックには、その3つの情報がありません。あるのは、「推薦文」のみ。

この本は、いつもと違う本との出逢い方・買い方を生んでいるのです!
つまり、消費者の購買ストーリーが大きく変わるということです。

普通だと出逢えない本に出会うことができる

本を探す時、2つのパターンがあります。

① 「それ」が欲しいと思って探す

①は、つまり検索です。
◯◯さんの書いた△△△という本を探すために取る行動は、
1) まず、ジャンルの棚を探します。(「日本文学」など)
2) 次に、出版社の棚を探します。(「集英社」など)
3) そして、作者の場所を探します。(頭文字「む」→「村上春樹」など)
4) 最後に、タイトルを探します。(「ノルウェイの森」など)

明らかに直球ストレートでその作品にたどり着くので、顕在的な「欲しい」という思いです。

② 偶然出逢う

②の場合は、①のように検索意思はありません。その場で得た情報から判断し、欲しいと思えば買います。
何らかの情報によって潜在的な「欲しい」が顕在化するということです。

あらすじを読んで、面白そうだなと買ってみたこともありますし、表紙が気に入ればジャケ買いすることもあります。
好きな作者やいつも見ているシリーズの新刊をたまたま発見した時もこちらのパターンですね。

特に、新作や注目の作品であれば表に並べられているので出逢いの確率も高いでしょう。

しかし、棚の中に並べられてしまうと、そのアピールポイントはタイトルと作者の名前だけ。そんな状態で、潜在的な「欲しい!」を引き出すのは難しいこと。

つまりここで出逢えるのは、
・本棚の表に出ている
・表紙が好み
・帯に書いている内容が気になる
・タイトルに惹かれる
・作者が好き
・シリーズが好き

こんなものでしょうか。

シークレットブックの場合

では、シークレットブックの場合はどうかと言うと、

◯ 本棚の表に出ている
× 表紙が見えない
× 帯がない
× タイトルが分からない
× 作者も分からない
× シリーズも分からない

ほとんど × です。

ここがポイント。
つまり、今まで使っていた判断基準が使えない、ということ。
これを裏返せば、新しい判断基準を使って本を買う経験ができるということです。

これって革命じゃないですか?

いつも通り
今まで通り

そんな消費者が日々繰り返してきた常識が覆される。
これが、新しい出逢い方、買い方です。やってくれたぜ、シークレットブック。

常識を覆すと新しいストーリーが生まれる

常識を覆された消費者は、いつもと違った行動に出ます。
いつも頼りにしている情報がないので、「いつも通り」ができないのです。

消費者が分かる情報は、この4つ。
・大きさ
・厚さ
・紹介文
・値段

すると、どのような体験が生まれるでしょうか?

推薦文をじっくり読む

本の内容が分かる情報は、推薦文しかありません。この状態で、推薦文を読まないということはおそらくないでしょう。
いつも本を買うときに推薦文を見ていない人にとっては、新たな体験となります。

ちなみに、シークレットブックは梟書茶房だけではありません。話題になった文庫X天狼院書店秘本など、タイトルを明かさずに売り出している店もあります。

この本はなんだ?当てっこゲーム

推薦文から何の本かを推測する。本好きな人にとってはこれが新たな遊びにもなりえます。

購入後、開ける楽しみ

推薦文を読んで、気に入ったら購入。その後、カバーを開けるワクワク感。
どんな内容だろうと読むワクワク感の前に、なんという本だろうというワクワク感が生まれるのは、シークレットブックならではですね。

新たな本に出逢える

買った時点ではその本のタイトルも作者も分かりません。ですから、新しい本に出逢える可能性が高いのです!これは、本屋で本の表紙を眺めるだけではたどり着けないものでしょう。

本に出逢い、購入し、開封し、読むという一連の流れは、言葉で表現すると動詞こそ変わりませんが、その中身は大きく異なる流れとなっています。

これらが、消費者にもたらされる新しいストーリーです。面白い UX を与えられるサービスですね。

※ UX (ユーザーエクスペリエンス)= 「ユーザー が製品・サービスを通じて得られる体験」

冒険心を掻き立てて潜在層を顧客化する

シークレットブックは、ある意味福袋のような、ヒントはあれど中身は分からない状態。
これに対して、不安を抱く消費者もいますが、冒険心を掻き立てられる人もいます。

いつも本を買う人は普通に買えばいいし、プラスでこの新たな体験をするのもいい。
いつも本を買わない人は、持っているものと被る心配もないし、シークレットにすることでワクワクを求めて購買に繋がる可能性もあります。

そんな統計的な情報は何も分かりませんが、ひとつのファクトとして、いつも買わない私が今回買ってしまったという、その事実があるので、この推測はあながち外れてはいないと思うのです。

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